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『朝鮮半島をどう見るか』

『朝鮮半島をどう見るか』_d0041400_15135025.jpg『朝鮮半島をどう見るか』
木村 幹著 集英社新書 
10日ほど前、本屋でたまたま見かけて手にした本です。ふだんは政治学の分野の本などには近づかない私でも、興味深くたちまち読むことができました。

大学院の助教授である著者の研究室に訪れてきた学部生のために特別のゼミナールを開くという仕立てで、タイトルは重そうなのですが、読みやすい文章で書かれています。
<目次>
プロローグ:朝鮮半島特別ゼミナール
1.朝鮮半島をめぐる不思議な議論
2.日本と朝鮮半島の将来は明るいか
3.朝鮮半島は小さいか―基礎的なデータから考える
4.朝鮮半島の人々は「強い民族意識」を持っているか―「常識」に挑戦する
5.解決不可能な大論争?―植民地支配をめぐる議論を解剖する
6.日韓関係はなぜこじれたか―歴史的因果関係を考える
7.北朝鮮について考える―ステレオタイプから離れるための練習問題
8.本当に大事なもの―なんのために朝鮮半島を見るのか
エピローグ:朝鮮半島へのドアを叩く

日本と朝鮮半島の間にあるこじれた問題の構造を、歴史と現在から客観的に見る見方が提示されていて、なんとなく分かったような気になっていたこともデータで確認してみるとまた別の見方ができることや、同じデータから全く異なる結論が導きだされる不思議などに気づかされます。そして、思い込みを排除してちゃんと自分の目で見、判断することの大切さを改めて感じさせられました。
 私たちは「過去」に関わる問題がなんらかの方法により解決可能だと安易に考えるのではなく「過去」と、「過去」にまつわる議論とともに生きなければならないという、「現実」を覚悟する必要がある。好むと好まざるとにかかわらず、朝鮮半島は私たちの隣にあり、私たちは日々かかわり合いを持ちながら過ごしている。重要なのは、そのような「過去」を引きずりながらでも、なんとかして彼らとともに、できるだけ円滑に過ごしていく方法を真剣に考えることだ。(中略)
 日本と朝鮮半島の「過去」は日本植民地支配期にのみあるのではない。植民地支配の終焉から半世紀以上、私たちが朝鮮半島の人々とともに築き上げてきたもう一つの「過去」とその重みにも、目を向けるべきときにきているのではないだろうか。

著者はあとがきで、「これを読んでくれた人々の何人かでも、これまでの凝り固まった朝鮮半島に対する見方に疑いを持ち、新しい試みへと歩を進めてくれるなら、それだけでこの本の目的を達することができたと言えるかもしれない。」と控え目な語り口ですが、熱い思いがこもっているように受け止めました。

韓流はこれからどこへ流れていこうとしているのか―
『嫌韓流』なる本がベストセラーになっているそうな―
冷静に考えてみるのに良いきっかけになる一冊だと思います。
by isa-syoujiten | 2006-03-02 15:24 | 本との出会い | Comments(8)
Commented by kacchan at 2006-03-02 20:20 x
私の通っている韓国語の先生が、日本は今韓流ブームで韓国が大好きで、韓国の若者も日本を好きな人が増えてきたけど、それでも温度差があると言っていました。歴史的なものがあるからなんでしょうか?
私はそういうことを全然知らなくて、政治的なことも何にも知らないのですが、ちょっとこういう本を読んで勉強するのもいいかもしれませんね。
Commented by すみれ子 at 2006-03-02 20:46 x
注文しました。光の当たる部分だけでは無く、今まで目を逸らしていた事にも目を向けようと思います。
Commented by 유림 at 2006-03-03 00:24 x
いささん、お久しぶりです。良い便りがありましたね。おめでとうございます~^0^
面白そうな本ですね。日韓の歴史的な問題はあまりにも敏感なところなので触れるのは怖いですが、、、これだけは、、、と思いまして、、、歴史を見る観点には大きく二つの観点があると思います。一つは国史学者たちの、もう一つは経済史学者たちの、、、すぐ目が行くのは数値や通計がはっきりしている後者の方です。客観的です。でも、いま韓流ブームでも分かるように、数値だけで説明できないところも多いでしょう、、、そのようなところも探って考えなければいけないので難しくて気まずい問題です、、、
Commented by isa-syoujiten at 2006-03-03 09:10
>kacchanさん
最初は何も知らなくてただ好きということでいいと思うのですが、関心をもったならより深く理解しあいたいと思いますものね。
kacchanさんはよい先生ができて良かったですね。
Commented by isa-syoujiten at 2006-03-03 09:11
>すみれ子さん
お読みになったら、ぜひ感想をお聞かせくださいね。
Commented by isa-syoujiten at 2006-03-03 09:25
>유림さん
お祝いの言葉をありがとうございます。

>難しくて気まずい問題です、、、
そうですね。でも、理解しあおうという人が増えてきて、このようにWeb上で直接語り合える時代に私たちはいるのです。
しっかり現実を見つめながら、よい関係を築いていきたいです。
そのためにも、言葉の勉強をがんばらなくっちゃ♪
Commented by きょんじゃ at 2006-03-03 10:07 x
これ、読んでみようと思います。今日彼が日本に来ます。私の家族にも会います。韓国の悪いところを並べ立てた本のコピーを渡してきた母に(もちろん私のことを心配しての行動ですが)この本を読んでもらえればとも思います。
Commented by isa-syoujiten at 2006-03-03 10:24
>きょんじゃさん
貴重な良き時間を過ごされますように! 良い結果をお祈りしていますよ。


「いさのハングル小辞典」をリニューアル。韓国と韓国語が好きな人と交流したいと願っています。2014年4月の韓国語能力検定試験で6級合格しました(^^*)


by いさ

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