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十三道倡義軍のソウル奪還作戦

韓国の小さな村で』(神谷丹路著)から、興味深いお話をご紹介! 
 
地下鉄1号線でソウル駅から北方向に向かって「北議政府(북의정부)駅」の近く、「維楊里(유양리)」はかつて楊州の行政・経済の中心地だったそうです。筆者が訪れた1996年当時は、かつての繁栄の影も伺えないさびれた村になりはてていました。それはご推察の通り、植民地政策の結果なのですが……。

楊州は1907年、朝鮮全国十三道から集まった「十三道倡義軍」がソウルを奪還するために集結した場所だといいます。ソウル―楊州間は東京―大宮間くらいの距離で、歩兵で一晩あれば進軍可能な地です。
乙巳保護条約(1905年、日本では「第二次日韓協約」と呼ぶ)によって実質的な国権を奪われた韓国は日本の植民地状態になりました。これに反対して全国で抗日の義兵闘争が巻き起こります。

●1907年7月、日本は韓国皇帝高宗(고종)を退位させ、統監府の日本人次官が韓国の内政を取り仕切りはじめ、同月31日に韓国軍隊の解散の詔勅を発表。
●解散命令に服従しない部隊があちこちで蜂起し、各地で活動していた義兵軍と合流し日本軍と熾烈な戦闘を繰り広げる。
●11月、朝鮮全土の義兵将に向けて、12月中にそれぞれ兵を率いて京畿道楊州に集結せよ、という檄文が飛ばされた。檄文の主は、李麟栄(이인영)という儒者出身の義兵将。朝鮮全国十三道の義兵を組織した統合司令部が楊州に設置され、李麟栄を総大将とし、参謀長に許蔿(허위)が推戴され、ソウルへの進撃が決定される。
●各地に送られた楊州集結の檄文に応じて、義兵将が大小の部隊を率いて北から南から続々と楊州に集まり、その数は約8000から一万名で、そのうち韓国軍人は3000名にのぼったという。
 こうして奪われた国権を回復するための、最大の反殖民地戦争・抗日独立戦争の火ぶたが切って落とされようとしていた。ところが不幸なことに、その矢先、総大将である李麟栄の父が死去した。父の葬儀を執行し、まる二年間の喪に服するために、総大将は全権を許蔿にゆだねて田舎へ帰った。

 私はこのくだりに接したとき、思わずめまいを覚えた。儒教の教えは、親への孝行をじゅんじゅんと説く。父が亡くなればその弔いのために、何事もさしおいて駆けつけるのがその教えという。「親に孝を尽くせないような者は、ケモノに等しい。ケモノに等しい者が、国を守る資格などない」という内容のことを、のち、日本の憲兵隊に逮捕された李麟栄自身が述べている。

 もちろん、わかります。しかし、それにしても……いったい、そんな場合ですか! お国のためなら、家族の不幸もかえりみずに尽くすべき、などと思うのは、滅私奉公を得意とする日本人的発想かしら……。誇り高い儒者の生き方は、利にさとい日本人の理解を超越している。

 しかし、総大将の父の急逝という不幸にもかかわらず、名実共に実質的な総大将となった許蔿将軍によって、全軍の指揮はおとろえるどころかますます高揚したという。訃報に接し、その日に帰郷した総大将をだれひとりとしてとがめる者はいなかった。
   ―(義兵のソウル奪還作戦・184頁)

誇り高き儒者たるもの、何より「親に孝」を優先するとは聞き知っているつもりでしたが、私もこのようなことがあったとは思いもよりませんでした。著者が「思わずめまいを覚えた」というのに、「さもありなん」と納得してしまいました。今でも日常的にこのような類のことがあるのでしょうか―ありそうですね。韓国を理解するには、知識と深い愛情が必要なようです。もちろん、韓国の人が日本を理解するにも同じでしょうけれど……。

著者は天安の独立記念館で展示されている「十三道倡義軍ソウル進撃作戦」の大ジオラマを見て、この楊州の歴史を知ったそうです。ソウルの西大門歴史記念館は訪れましたが、いつかは天安の独立記念館にも行こうと思っています。

by isa-syoujiten | 2006-04-08 16:37 | 本との出会い | Trackback | Comments(4)
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Commented by iyonm at 2006-04-08 22:50 x
西大門歴史記念館は行ってないけれど、独立記念館は、はじめての訪韓時に行きました。ドキドキしながら見学しました。「冬ソナ」と「独立記念館」という旅にガイドさん(在韓17年の日本人)もびっくりしてました。でもはじめて韓国の地を踏むにあたって、どうしても独立記念館には行かなければと思いました。とにかく知ることからスタートすると思って・・・
Commented by isa-syoujiten at 2006-04-09 15:10
>iyonmさん
初訪韓で「冬ソナ」と「独立記念館」とは、私もびっくりしました。iyonmさんの志の高さが伺えます。私も行く時はドキドキしながら訪ねることになりそうです。
今読んでいるところなのですが、神谷丹路さんの処女作『韓国 近い昔の旅』も勉強になる良い本です。また、紹介したいと思っています。
Commented by hyomin at 2006-04-10 10:18
isaさん、おはようございます。
主人の実家が、独立記念館のある、天安です。
・・・私ももちろん、行ったことがありますよ。。。決意が要りましたが。。。
"自分が日本人をいう事を、来ている韓国人達に知られたくないな・・・"と思ったことを思い出します。。。
でも、歴史を理解した上で、今を知ることが何よりも大事なので、しっかり見てきました。
両国の壮絶な歴史を知った上で、こうして温かく接してくれる韓国人に対して、感謝する日々です。
Commented by isa-syoujiten at 2006-04-10 12:55
>hyominさん
そうですか、ご主人のご実家が天安ですか。柳寛順と一緒ですね。

>両国の壮絶な歴史を知った上で、こうして温かく接してくれる韓国人に対して、感謝する日々です
その地で生活をしていると、さぞ切実に感じられることでしょう。
近いうちに訪れようと思います。
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